法人で古物商許可を取得するメリット・デメリットと個人事業主との違い

古物商許可は、個人事業主でも法人でも取得できますが、どちらで取得するかによって、許可手続きの複雑さ、費用、そして事業運営上のメリット・デメリットが大きく異なります。

  • 「今は個人事業主だが、法人化した方がいいのか?」
  • 「法人の方が信用度が高いと聞くが、手続きは面倒ではないか?」
  • 「法人と個人で許可申請の何が違うのか?」

中古品ビジネスの規模拡大を検討している方にとって、法人化のタイミングと、それに伴う古物商許可の手続きの違いは、非常に重要な経営判断となります。
本記事では、古物商許可を専門とする行政書士が、法人と個人事業主の古物商許可取得に関する違いを「メリット」「デメリット」「手続き」の3つの側面から徹底比較します。

古物商許可の取得:法人と個人事業主の最大の違い

古物商許可を取得する際、法人(株式会社、合同会社など)と個人事業主で最も大きく異なるのは、審査の対象者です。

審査対象の範囲が広がる

区分審査の対象者(欠格事由チェック)
個人事業主申請者本人、および営業所の管理者
法人代表取締役、すべての役員(取締役、監査役など)、および営業所の管理者

法人の場合、代表者だけでなく、すべての役員について欠格事由(犯罪歴、破産歴など)のチェックが行われます。役員が一人でも欠格事由に該当すると、法人全体として許可は下りません。

法人で古物商許可を取得するメリット

法人で許可を取得する主なメリットは、事業の信用力向上税制面に集中します。

メリット① 社会的信用の向上

  • 取引の拡大: 法人化することで、金融機関からの融資を受けやすくなったり、古物市場(業者専門オークション)での取引において、個人事業主よりも信用を得やすくなったりします。
  • 大規模取引の獲得: 大手企業や他の法人との取引において、「法人」であることは信頼の証となり、大型の仕入れや契約に繋がりやすくなります。

メリット② 税制・経営面での有利性

  • 節税対策: 所得が一定額を超えると、個人事業主よりも法人の方が税率が低くなるため、大きな節税効果が見込めます。
  • 経費の範囲拡大: 役員報酬や出張手当など、個人事業主では認められない経費を計上できるようになります。

メリット③ 複数の営業所の設置・事業展開の容易さ

  • 事業展開: 法人名義で複数の営業所(支店など)の許可を一度に取得しやすく、事業拡大の足がかりを築きやすいです。

法人で古物商許可を取得するデメリット

信用力が向上する一方で、法人化は手続きや維持管理においてデメリットもあります。

デメリット① 申請手続きの複雑化と高い初期費用

  • 書類の増加: 申請書類に加えて、登記事項証明書定款のコピー役員全員分の公的書類が必要になるため、書類の量が増加し、手続きが複雑になります。
  • 法人設立費用: 許可取得とは別に、法人を設立するための登記費用など(約20万円~30万円)の初期費用が必要です。

デメリット② 役員全員に適用される欠格事由のハードル

  • 前述の通り、役員の一人でも欠格事由に該当すると、会社として許可が取得できません。親族などを役員に加える場合は、全員の経歴チェックが必須です。

デメリット③ 維持管理コストの増加

  • 税理士費用: 複雑な法人税の申告が必要になるため、税理士との顧問契約が必要になる場合が多く、ランニングコストが増加します。
  • 変更手続きの煩雑化: 役員変更や本店移転など、法人登記簿の内容に変更が生じた場合、古物商許可の変更届出も必須となり、手続きが二重になります。

まとめ

項目個人事業主法人
申請難易度低い(シンプル)高い(書類が多い)
審査対象者本人+管理者全役員+管理者
申請費用法定手数料1.9万円+実費法定手数料1.9万円+実費+法人設立費用
社会的信用低い高い
税制上のメリット所得が少ないうちは有利所得が多い場合に有利
許可後の変更手続き比較的簡単役員変更などで手続きが煩雑

法人化を検討すべきタイミング

古物商許可の観点から見ると、以下のような場合は法人化を積極的に検討すべき時期と言えます。

  • 事業規模の拡大: 大口の取引や、法人相手の取引が増えてきたとき。
  • 節税対策: 年間の所得が約800万円~1,000万円を超え、税率の面で法人の方が有利になるとき。
  • 組織化: 複数の従業員を雇用し、事業責任を明確にしたいとき。

法人での古物商許可取得は、個人事業主の時と比べて手続きの複雑さが増します。
特に、役員全員の書類収集や、法人設立後の登記簿との整合性を取る作業は、専門知識がないと不許可の原因になりかねません。
また、「個人で取得した古物商許可を法人に引き継ぐ」という事はできません。
法人化した場合には新たに古物商許可を取り直すことになります。
以上のようなことを考えて、法人化をするかどうかを検討するようにしましょう。

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