【古物商向け】買取時の本人確認義務と非対面取引における注意点

古物商許可を取得し、中古品の「買取」を行う場合に課せられる義務が「本人確認義務」です。
これは、盗品や不正品が市場に流通するのを防ぐため、古物営業法によって定められています。
この義務を怠ると、最悪の場合、許可の取り消しや罰則の対象となり、ビジネスの継続が不可能になります。
特に近年、メルカリやネットオークションを活用した「非対面取引(宅配買取やオンライン買取)」が増加している中で、「対面ではない場合の本人確認をどう行うべきか?」という疑問を持つ古物商の方が増えています。
本記事では、古物営業に精通した行政書士が、以下の重要事項を徹底的に解説します。

  1. 本人確認が義務付けられるケース
  2. 対面取引における具体的な確認方法
  3. 非対面取引(オンライン買取)で適用される厳格なルールと注意点

法令違反のリスクを回避し、安心・安全に事業を継続するために、ぜひこの記事で正しい知識を身につけてください。

古物商に本人確認が「義務付けられる」ケース

本人確認義務が発生するのは、盗品の疑いをチェックする必要がある「古物を取得する取引」です。

本人確認が必要な取引

古物商許可を持つ業者が、以下の行為を行う場合は、相手方の本人確認が義務付けられます。

  1. 古物の買い受け(買取): 相手から古物を買い取る場合。
  2. 古物の交換: 相手と古物を交換する場合。
  3. 委託を受けて売買・交換する場合: 相手から販売を依頼され、売買が成立した場合。

本人確認が「不要」な取引

一方で、古物を売却する(販売する)場合は、相手方の本人確認は基本的に不要です。
ただし、相手が持ち込んだ古物を代金の一部として受け取る(下取りする)場合は、「買い受け」にあたるため、本人確認が必要です。

対面取引(店頭買取など)における本人確認の鉄則

店舗を構えて買取を行う場合や、出張買取を行う場合など、相手と直接顔を合わせる「対面取引」では、以下の方法で本人確認を行います。

基本的な確認方法

  • 公的証明書の提示: 相手方に、運転免許証、マイナンバーカード、健康保険証、在留カードなどの公的証明書を提示してもらいます。
  • 記録の義務: 提示された証明書に記載されている氏名、住所、職業、年齢を、古物台帳に正確に記録します。
  • 年齢の確認: 18歳未満(未成年者)からの古物の買取は、保護者の同意書などがない限り禁止されています。

非対面取引(オンライン・宅配買取)の厳格なルール

フリマアプリやウェブサイトを通じて行う非対面取引(宅配買取、オンライン買取)は、対面取引よりも不正な取引のリスクが高いため、古物営業法で厳格な本人確認方法が定められています。

非対面取引で認められる本人確認の方法

古物営業法施行規則では、非対面取引で本人確認を行う方法が複数定められていますが、実務で使われる主な手段は以下の2つです。

① 送金先口座を利用した確認

  • 取引相手に公的証明書のコピーを送付してもらう。
  • 買取代金を、公的証明書に記載された氏名と同一名義の金融機関口座に振り込む。
  • この方法により、「証明書の人物」と「口座の所有者」が一致することで、本人であると確認します。

② 追跡可能な郵便を利用した確認

  • 取引相手に対し、本人限定受取郵便書留郵便などの追跡可能な郵便で、公的証明書のコピーを送付してもらう。
  • この際、相手方の現住所に宛てて送付し、住所の真正性を確認します。

【厳重注意】IDや電話番号だけでは不十分

メルカリやヤフオクなどのプラットフォームのIDや電話番号だけでは、古物営業法上の本人確認とは認められません
IDは第三者に譲渡されている可能性があり、「公的証明書」と「現住所」を紐づけた確認が必須です。
この原則を破ると、本人確認義務違反として処罰の対象となります。

まとめ

本人確認義務は、古物商の「社会的責任」です。
この義務を軽視した場合、以下のような重いペナルティが課せられます。

  • 本人確認義務違反: 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金

これは無許可営業罪に匹敵する重い罰則であり、一度でも摘発されるとビジネスの継続は極めて困難になります。
中古品ビジネスの生命線は、「信用」と「法令遵守」です。
非対面取引を主力とする古物商様は特に、本人確認のフローを今一度見直し、リスクがないか確認してください。

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