古物商が守るべき3つの義務と帳簿(台帳)の正しい付け方
念願の古物商許可を取得し、いざビジネスをスタート!しかし、許可証を手に入れたからといって、すべてが自由になるわけではありません。
古物商として中古品を取り扱う以上、「盗品の流通防止」という古物営業法の目的に基づき、許可業者に課せられた「3つの義務」を遵守する責任があります。これらの義務を怠ると、最悪の場合、許可の取り消しや刑事罰の対象となる可能性があります。
本記事では、古物商許可を専門とする行政書士が、古物商が守るべき3つの義務と、間違いやすい「古物台帳(帳簿)」の付け方を解説します。
古物商に課せられた「3つの義務」とは
古物営業法では、古物商に以下の3つ義務を課しています。これらはすべて、盗品や不正品の流通を防ぐために設けられています。
義務① 取引相手の「本人確認」義務
古物を買い取ったり、交換したりする場合、取引相手が本当にその品物の所有者であるかを確認する義務があります。
これは、盗品を売却しようとする犯罪者を特定するためです。
1. 確認が必要なケース
- 古物を買い受ける(買い取る)場合
- 古物を交換する場合
- 委託を受けて古物を売買・交換する場合
2. 本人確認の方法(個人)
- 対面取引の場合:
- 運転免許証、マイナンバーカード、健康保険証などの公的証明書の提示を受け、記録する。
- 非対面取引(メルカリ、ネットオークションなど)の場合:
- 相手から送付された公的証明書のコピーと、本人名義の銀行口座への振り込みなどを組み合わせて確認する。
義務② 不正品の「申告・届出」義務
取引しようとする古物が、盗品や不正に持ち込まれたものである疑いがある場合、直ちに警察署長に申告する義務があります。
- 具体的な行動: 「これ、もしかしたら盗品かもしれない」と疑いが生じた時点で、その場で取引を止め、速やかに警察署に届け出ます。
- ポイント: 疑わしいと判断したにもかかわらず取引を続行した場合、申告義務違反となり、罰則の対象となる可能性があります。
義務③ 取引内容の「記録(帳簿)」義務
古物の取引を行った際は、必ずその内容を「古物台帳」などの帳簿に記録し、一定期間保管する義務があります。
- 目的: 盗品の捜査が必要になった際、警察がその記録を追跡できるようにするため。
- 保管期間: 記録した日から3年間の保管が義務付けられています。
古物台帳(帳簿)の正しい付け方と例外
「記録義務」の中でも、特に古物商を悩ませるのが「古物台帳」の正しい付け方です。
記録すべき必須事項
古物商が取引を記録する台帳(帳簿)には、以下の事項をすべて正確に記載しなければなりません。
- 取引年月日
- 古物の品目と数量
- 古物の特徴(色、型番、ブランド、状態など)
- 取引相手の住所、氏名、職業、年齢
- 取引相手の本人確認方法(例:運転免許証提示)
- 対価の額(取引金額)
💡 台帳の形式は自由
帳簿は、紙のノートである必要はありません。パソコンやクラウドサービスを使った電子データでの管理も可能です。ただし、以下の条件を満たす必要があります。
- 即座に閲覧可能: 警察の求めがあった際、すぐに印刷または画面表示ができること。
- 改ざん防止: 記録の追加・修正・削除の履歴が残るシステムであること。
記録義務が「免除」される主なケース
一部の古物取引については、記録義務が免除または簡略化されます。これは、一つ一つの取引額が小さく、盗品である可能性が低いと考えられるためです。
免除される条件
- 売却・交換価格が1万円未満 の場合
ただし、書籍、CD、DVD、ゲームソフト、オートバイの部品などは、1万円未満でも記録が必要です。 - 相手が古物商 の場合
- 自己が売却または交換する場合
「1万円未満の取引は記録しなくても良い」という例外は、適用範囲が非常に限定的です。
特に「自動二輪車及び原動機付自転車」は1万円未満でも記録が必須です。
不安な場合は、すべての取引を記録するのがいいでしょう。
義務違反のペナルティと許可取り消し
古物商の義務を怠った場合、無許可営業罪とは別のペナルティが課せられます。
許可取り消し・停止処分
本人確認や帳簿記録の義務を怠ったり、不正品の申告を怠ったりした場合、公安委員会から営業停止命令や古物商許可の取り消し処分を受ける可能性があります。
許可が取り消されると、その日から5年間は再申請ができません。
罰則
- 帳簿への記録を怠った場合: 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金
- 帳簿を偽造した場合: 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金
まとめ
古物商の義務は、一見複雑に思えますが、「盗品を扱わない、扱ったら警察に協力する」という基本姿勢に基づいています。
許可取得後の適切な運営こそが、ビジネスの安定と信用に繋がります。
「この取引で本人確認は必要か?」「帳簿はこの書き方で合っているか?」など、許可取得後の運用に関する疑問が生じた際は、警察署や行政書士に相談するとよいでしょう。
お気軽にお問い合わせください。070-8490-7268受付時間 8:00-20:00 [ 土日祝日も対応 ]
郵送・連絡先
